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「ずっと……私を好きでいてくれて、ありがとうございました」
それは、私の口から自然に出た言葉だった。
「胡桃……」
「それにたくさん、待ってくれて……」
彼は店長が好きな私を、きっと私が想像していた以上にずっと辛い気持ちで見ていたに違いない。
私は何も知らなかった。
言葉が続かず、下唇を噛み締める。
すると今度は彼が大きく首を横に振った。
「……これからは、私も優君をずっと好きでいます」
私が彼の手を強く握りしめて、そう伝えると彼が「胡桃……」と、まるで泣きそうな声で私を呼んだ。
優君はさすがに泣かないけれど、彼の表情はあきらかに胸がいっぱいという感じで、私の胸が締め付けられる。
「優君……」
私が頼りなく彼を呼び返すと、彼が「ありがとう」と言ってくれた。
その言葉は“好き”と同じくらい、私には大切に届く。
それから「嬉しくてたまらない……」と続けて言い、優君は私の頬に溢れていた涙を手で拭ってくれた。
「……立ち止まらせてごめんね、胡桃お腹へってるんだったのに……」
「いえ」
私は自身の空いている片方の手でも頬を拭い、首を横に振った。だって、今私の心は満杯という感じだ。
彼は優しく「行こうか」と言ったので、私は頷き歩きはじめる。
再び歩きはじめたとき、周囲の視線を少し感じたが、彼が「胡桃、見て。あの木クリスマスツリーみたいでしょ」と言って、向かいにライトアップされている木があることを教えてくれたので、気にならなくなった。
「綺麗ですね」
「うん。あれ、レインツリーだよ」
「あ……本当ですね」
私がそう言うと彼は嬉しそうな顔をして「レインツリーがたくさん立っている場所もあるんだ。明日行こうか」と言った。
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