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「はい」
レインツリーがたくさん立っている場所だなんて、想像するだけでとても素敵そうで、私は大きく首を縦に振った。
「植物園もあるんだよ」
「優君が行った場所ですか?」
私は思わずそう言ってしまったが、すぐにハッとし「あ……」と言い口を手で当てた。
「……姉に聞いたの?」
彼は少し驚いたような様子を見せたが、優奈さんに聞いたことをすぐに当ててみせた。
「はい……すみません」
「謝ることないよ、悪いことはしてないんだから」
その言い方も懐かしく、私は繋いでいる手を思わず握りしめてしまう。
「でも少し恥ずかしいな……一人で植物園に行ってたことを胡桃に知られてたなんて。女々しく感じたでしょ?」
彼はそう言うが、私は大きく否定した。
「そんなことないです……!私は嬉かったです。私を思い出してくれているのかもと期待して、自惚れてしまうくらいでしたし……」
むしろ、私の発言のほうが恥ずかしいような気がして、最後は小声になってしまった。
「自惚れじゃないよ。実際胡桃のことばかり考えてたし……」
「……優君」
「植物園で写真撮ったんだ。あとで見る?」
「あ、はい。ただ、私……優奈さんに優君が送った写真をもらったんです」
きっと五日も一緒にいたなら、見つかってしまうだろうと自分から告白した。
「そうなの?」
「はい。それで、勝手に待ち受けにしちゃいました……」
すると彼は少し驚いたような様子を見せたが、すぐに笑みを浮かべ「そっか」と言った。
私は彼の視線が私から前方へ変わってからも、横顔を見つめていたが、その表情はとても嬉しそうに見えたので、もっと早く彼の何かに変えていればよかったと後悔する。
「優君……あの、できれば今回、優君との写真が欲しいんですけど」
そこで私は、一人のときに悔やんだことを思いだし、彼に頼んだ。
「……え、あぁ、うん。俺もほしい」
「わ、よかった……」
快く彼が頷いてくれ、ホッとする。
少しずつ彼とのモノが増えていくのは、なんだか楽しみでもある。
ようやく本当の“恋人”になっていく気がした。
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