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「早速、夕飯を食べ終えたらどこかで撮ろう……」
「あ、はい」
この付近では色々とライトアップされている場所があるため、それらを写真の背景にするときっと綺麗におさまるだろう。
しかし、私の本音は背景より、隣にいる彼が重要なのだが、それは秘密にしておいた。
それから私たちはフードセンターに行ったのだが、何を頼めばいいのかわからない私の代わりに、彼が私の好むものを頼んでくれ、一緒に食べた。
やっぱりその姿は頼もしくて、カッコよく、私の心はますます彼へ向くよう。
空いていた席に座ると、少し気持ちは落ち着いたが、今夜彼に会ってからずっと胸の鼓動は高鳴りっぱなしだ。
「優君はまだこっちに来てひと月少しなのに、すごいですね。お店とか道とか詳しくてすごく慣れてる感じがします……」
「そんなことないよ。店や道も同僚なんかと一緒に来て覚えただけ。まだまだわかんないよ……言葉も違うし」
「でも私だったら、きっとまだ慣れずにいると思うので、カッコいいです」
すると彼が「真面目に言われちゃうと照れるな……」と言い、言葉通り照れた様子をみせた。
「きっと日本に戻るときはとっても詳しくなってるんでしょうね」
私がそう言うと彼は浮かべていた笑みを消した。
なんだかとても真剣な表情になるため、ドキドキしてしまう。
そんなとき、私たちの間に「須賀原」という、男性の声が割った。
声をかけてきたのは彼と同じ歳くらいの男性で、彼は「夏井……」と言い返す。
そこで私はピンときて、頭の中であの彼女の義兄だと結びつけた。
すると夏井という男性は「あ……」と言って、私を見つめた。
私が小さく身体をびくつかせると、優君が「なんだよ……」と、私を庇うようにして少し前に身体をずらした。
「ごめん。この子、須賀原のこと待ってたんだ……キミ、会社の前にいた子だよね?」
私はそう言われ、一人の男性に話しかけられたことを思い出した。
正直、彼の顔には記憶がなかったが、「……はい」と答えると、優君もわかったようで、私を見つめた。
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