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「そうだったのか……なるほど。やけに綺麗な子がいるなとは思ってたけど、須賀原の知り合いだったとは……」
彼が納得するように呟くと、優君が「俺の彼女なんだ」と言ってくれた。
「……あ、うん。はじめまして、夏井です」
すると彼は慌てたように、挨拶をした。
「は、はじめまして……深田です」
私も慌てて挨拶を返すと、彼が「深田さんね」と笑った。
しかし優君が「もうすぐ須賀原にする予定だけどね……」と、言ったので、私は恥ずかしくなり俯く。
「へぇ、そっか」
「うん」
彼は俯く私の頭を撫でるので、ますます顔があげられない。
すると彼は「奥さんにも……伝えとくわ」と言ったので、自然と彼女にも伝わるだろうと感じ、少しだけ顔を上げ、男性を見つめる。
彼は優君を見ていたので視線は絡まなかったが、表情は真剣だった。
「うん、そうして。よろしく」
「じゃあな。ごゆっくり……またね深田さん」
「あ、は、はい……」
優君はわざと彼に私のことを強めに紹介してくれたのだろうか……
それは、彼が彼女の義兄だからだろう。
「優君……」
私が優君を呼ぶと彼は「うん?食べよっか……?」と食事を薦めた。
「はい」
私の不安だった気持ちは、彼の行動により消えていく。こんなぐしゃぐしゃな顔で彼の友人に会ったのは、恥ずかしいことだけれど、会えてよかったはず。
もう彼女のことで悩むことはないだろうと、私は密かに確信していた。
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