185人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
優君も私と同じように感じているのだろうか……
聞いてみたいけど、聞けない。
ちらりと盗み見つめる先の彼の顔は、とても穏やかなものなので、彼もきっと同じ気持ちだといい。
私は、そう思っていた。
そんな、甘い雰囲気を割ったのは、彼のお腹の音だった。
部屋は二人きりで静かなため、その音が彼のものだとすぐにわかる。
「ごめん」
彼が少し気恥ずかしそうに謝ったため、私は「お腹、空きましたね……」と、口にした。
本当のところ、胸がいっぱいで、そこまで気が回っていない。だが、彼が申し訳なさそうに表情を歪めるから、合わせたのだ。
「うん」
「そういえば、朝は何か食べました?」
「いや……実は夜に食べたっきり……」
しかし彼の打ち明けた事実に驚き、私は慌て彼の腕から抜け出した。
長旅で疲れてる彼のことを、ちゃんと気遣うべきだったと、後悔さえする。
思わず素肌だったのを忘れ、上半身を起き上がらせてしまったほど。
だが途中でハッとし、シーツを自身の胸元に手繰り寄せたけれど、遅かった。
彼の視線が私が隠した場所に集中する。
もう見えていないのに、恥ずかしいため強くシーツを掴んでしまう。
しかも私は彼に、「あ、あの……昼食作ります」と言ったが、その声はひどくたどたどしくなる。
「あ、ありがとう……」
そのせいで、彼もなんだか恥ずかしそうな様子で答えた。
最初のコメントを投稿しよう!