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私は彼に「見ないでくださいね……」と言って、彼の身体を後ろを向かせると、ベッドを抜け出した。
何度も彼が見ていないか確認しつつ、床にデタラメに広がる服を着衣する。
慌てて着替え終えたあと、彼の散らばる衣服が気になり、それらを集め畳んだとき、彼の視線が寝返ったことで、私を捉えた。
今なら振り返られても平気だ。
「ふ、服置いておきますね」
しかし、彼の服を手にしているのは、なんとなく恥ずかしい。そのため、最後に畳んだ彼のシャツを手から離すとすぐ、よくあるテレビドラマなどで、捕らえられるときに見せる犯人のポーズのように一瞬、彼に向けて両手を上げてしまった。
「うん、ありがとう」
彼は、私の様子がおかしいのか、笑った。
きっと、彼の目には私はひどく動揺して見えているに違いない。
優君は、それからすぐに上半身を起こしたが、私の視界いっぱいに、滑らかな彼の素肌が映る。
彼の逞しいしっかりとした筋肉と、厚みのある胸の筋肉を確かめてしまうと、胸がドキドキした。
彼は、私のように私の視線が、彼の身体に注がれていても照れる様子は見せない。
むしろ、私が照れてしまい、「い、いえ」と言って、立ち上がり彼から背を向けた。
私はそれから狭い部屋であるのに、駆けるようにキッチンへ行き、冷蔵庫を開けた。
昨日、彼に振る舞うためにオムライスの材料を買っていた。
卵四つにケチャップとマヨネーズ、そして牛挽き肉を取り出すと、次に冷蔵庫の横に置いてある、野菜を収納している縦長である二段式のバスケットから玉ねぎを取った。
それらをキッチン台に並べると、今度は別のドキドキに襲われる。
実は、彼にオムライスを作るのは今日がはじめてであるので、上手くできるか不安なのだ。
それでも、どうか綺麗に作れますように、と祈りつつ料理をはじめる。
私がまず、玉ねぎの皮を剥くために端を切り落とすと、着替えた彼が起きてきて私の横に立った。
そのことで、より胸のドキドキが増えるよう。
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