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動揺し過ぎて声がうわずったが、構わない。
それよりまだチョコを渡すことへ、心の準備ができていない焦りのほうが強くあるので、動かない彼の隣から、私はお茶のペットボトルを手にとる。
それに、彼は私が前に乗り出してきたことで、冷蔵庫の扉から彼の手が離れたため、私は扉を閉めることに成功した。
優君の顔はあえて見ずに、彼に背を向けテーブルに並ぶコップを目指すが、彼が密かに冷蔵庫の扉を開けていたことに気づいたのは、お茶を注ぎ終えてからだった。
私が彼のほうを振り返り「優君、お茶です……」と言ったとき、彼の手に私がラッピングした手作りチョコの袋があるのを目にして驚いた。
「優君、それ……!」
思わず大きな声を出してしまうと、彼が「ごめん、気になって……これ手作りのチョコだよね……胡桃が作ったの?」と言った。
冷蔵庫の中にあるものは好きに食べていいので、彼が手にしたことに対しては、全く怒りなんてない。
しかし、バレたくなかったため、今日は開けないで、と言えばよかったと後悔した。
「はい」
私は首を縦に一度振り、上目遣いに彼を見つめた。
「これ、俺に作ってくれたの……?」
「……」
彼は控えめな様子で聞いた。
しかし、私は答えられない。
すると続けて「もしかして、俺じゃない誰かのために……?」と、これもまた控えめに尋ねる。
二度目の質問は違うため、首を横に振り否定した。
「優君に、です……!」
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