185人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言った私の声もとても大きい。そのため、彼も少し驚いたよう。
「でも……渡すには下手すぎて恥ずかしいんですけど、少し早いバレンタインデーに……と、思って作りました」
もし渡すとしたならば、違う形で渡したかった。
しかし、彼に違う人への贈り物だと思われるのは嫌だった。
私が事実を伝えると、彼は少しの間黙ってしまう。
「……へ、へんてこになってしまって……なんだか、ごめんなさい」
私はなんだか申し訳なくなり、謝った。
もしかすると彼は、下手くそすぎる手作りチョコを目に入れたことで、言葉をなくしてしまったのかもしれない。
「……すごく嬉しい」
「……え?」
彼の声はちゃんと届いた。
しかし、見た目の悪いチョコを目にしているはずなのに、彼の表情がいかにも嬉しそうに緩んでいるため、私はすぐには信じられず、聞き返してしまった。
「昨夜、作ったの?」
「あ、はい」
「ありがとう、胡桃……」
彼はチョコを手にしたまま私へと歩み寄る。
そして、私をきつく抱き締めた。
「嬉しい、ほんと……ありがとう」
彼の声も、回す腕の力強さにも心がこもっているのが伝わる。
最初のコメントを投稿しよう!