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やはり私が想像していた通り、彼は喜んでくれた。だが、想像していた優君は無理して笑っている彼だった。
そのため、戸惑ってしまい黙っていると、彼は私を抱き締めるのを止めた。
それから彼は両手でチョコの袋を持ち、「開けていい?」と尋ねる。
私の胸はそれにより、変に緊張する。
今はまだ幾分かラッピングでごまかされているものの、開けられるとひどい形が丸わかりだ。
それに、味にも自信がなかった。
「ご、ご飯のあとがいいんじゃないですか……?」
私は心の準備がなく、頷けずそう言った。
すると彼は「ううん、今がいい」と、言う。
「……」
私はあからさまに困り顔になっているはず。
「ダメかな?」
彼は優しい顔で、私の顔を覗き込む。その顔は、私の気持ちをわかっているような気がする。
「……ダメじゃないですけど、恥ずかしくて……」
私は視線の先を彼からチョコへ向けた。
「本当なら、もっと綺麗にできる予定だったんですけど……なぜかこんな見た目になってしまったから」
レシピ通りにつくったはずなのだが、どうしてかまるで違うものになってしまった。
きっと私には、料理のセンスがないよう。
すると彼は私の顎を彼の手で優しく持ち上げたため、彼ともう一度視線が絡む。
優しく緩やかな瞳と目が合いすぐに、彼の唇が私の唇に軽く触れた。
「胡桃が作ってくれたことが嬉しいよ」
「優君……」
「だって、仕事のあと、俺のために作ってくれたんでしょ?」
彼の声はとても穏やかだ。
そして、彼の顔がとても近い。
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