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私は一番黄色が好きなため、贔屓目もあるかもしれないが、黄色のラナンキュラスは、優しい彼にぴったりだとずっと思っていた。
押し花を作るために花びらを一枚一枚優しく取り、それを丁寧に重ねた時間は、彼のことを思い作った。
完成した押し花は、優しい黄色のままで、やはり彼っぽい、と一人思っては頬を緩ませていた。
前々から、バレンタインデーにチョコと共に何かを贈りたいと思っていた。
そのため定休日に一人、街をぶらつき男物のプレゼントを探し歩いたものの、何がよいのかさっぱりわからず、断念してしまったのは先月のこと。
そこで花束を贈ろうかと考えたが、彼は飛行機に乗りシンガポールへ帰らなければならないため、邪魔になる。
私は悩んだあげく、ラナンキュラスの花で押し花を作った。
「……実は、このフォトフレームも作ったんです」
「え、そうなの?」
私はやや驚いた表情の彼を見つめ頷くと、彼から離れベッド横の小さなチェストの一番上の引き出しを開けた。
そこから、縦に縦長のフォトフレームを取り出した。
それは、私がこっそり作っていたもの。
木製の縁のフォトフレームは、中のガラス部分に飾る写真を邪魔しない端全面に黄色のラナンキュラスを挟んでいる。
彼は私のほうへ歩み寄ったため、私は彼にそれを見せた。
すると彼はフォトフレームを無言で手にする。
「優君と私の写真を飾れたらなって思って……」
これは確実にチョコより上手くできている。
しかし、不安なことは私の写真を飾ることを強要しているようであること。
「……嬉しい。ありがとう」
「本当……ですか?」
「写真、携帯でしか見れなかったから」
それは、たしかにそう。
互いの携帯には二人の写真がちゃんと大切に保管されてあるが、そこだけで留まっていた。
「ありがとう。大切にする」
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