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彼の瞳も私を見つめているため、しばらく視線が合ったまま。
私は彼が飲み込むのを確認すると、感想を聞く前に「ごめんなさい……!」と、言った。
それは先回りの謝罪だ。
すると彼は優しい顔で「どうして謝るの?美味しいよ」と言った。
「……本当ですか?」
きっと、私の目は真剣そのものだろう。
「うん。この中に入ってるナッツはクルミだよね?」
彼は私を安心させるように頷いたあと、半分になったチョコの断面を見せた。
そこにはチョコの焦げ茶の中に白色が混じっている。
彼の言う通りクルミで間違いはない。
「……はい」
ただのナッツなのだが、私の名前だけに彼が口にすると、恥ずかしい。
クルミを材料に使ったのは私なだけに、不安だというのに、照れてしまう。
「よくわかりましたね……」
そのせいで、とても早口になった。
「うん。クルミは好きだから」
「……」
それはどちらの“クルミ”なのか……
私の顔が赤らむのを感じる。
「美味しい、あと半分も食べるね」
「ど、どうぞ」
彼はゆっくりと口に入れる。
その口元が、なぜか一口目のときよりも、艶やかに映る。
それはきっと“クルミ”のせい。
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