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「……ん?」
彼は私が声を出すとは思わなかったのか、やや目を大きくした。
「あ、あの……決して嫌とかではなくて、恥ずかしいだけです」
彼の大きくなった目が私を見つめるため、恥ずかしい。そのため私はとても小さな声でそう伝えた。
「……そうなの?」
するとなぜか彼も小さな声になる。
彼が恥ずかしい、と感じることはないと思うが、大きなリアクションをとられなかったことは、私をホッとさせた。
私は首を一度縦に振る。
「うん……」
するとどうしてなのか彼も頷き、私の頬から手を離した。
彼は私を見つめたままだが、何を考えているのかわからない。
そこで私はホテルに泊まるならば、私が支払いをもとうと「プレゼントになりますか……?」と言った。
すると彼は一度普段の大きさに戻った目を、再度大きくさせた。
「……へ」
それから気の抜けたような声を出した。
私は派手に遊ぶタイプではなく堅実派のため、少ない給与の中でも貯金はしている。
今回シンガポールへ来るための旅費も、これまでの貯金を使った。
優君には、付き合う前から今もたくさんお金を使わせている。
いつかはお礼をしたいとずっと感じていたので、今夜はチャンスだ。
昨夜が彼の誕生日だったので、一日遅れのプレゼントになるだろう、と今思い付く。
そのため、どれくらい高いホテルかわからないが、私が払えたらいいと思い口にした。
「プ、プレゼント……?」
優しい彼は申し訳ないと感じたのだろうか、慌てた様子をみせる。
「はい」
そのため私は彼の目を真っ直ぐに見つめて、頷いた。 もちろん、恥ずかしかったけれど……
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