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シンガポールの夜の道を、私と優君はやや早足で歩く。
シンガポールの街は慣れてないもので、新鮮だ。しかし、今は隣の彼のほうが気になる。
骨ばった手で握られている私の手はとても熱い。
それと比例するように、私の心も熱い。
「胡桃、足大丈夫?」
彼は早足のためだろう、私のことを気遣うのは家を出て三度目だ。
「大丈夫ですよ。それより優君、重くないですか?」
「大丈夫だよ」
私もそれを聞くのは三度目。
その理由は、彼が私のものまで入れたバッグを持っているからだ。
私はショルダーバッグを提げているだけだが、彼は肩に大きめのバッグをかけており、手には私が持参した花カゴを持っている。
その中には私が渡した“cotton candy”がある。
「見えた、あそこだよ」
彼が指をさすのは、これから私たちが泊まるホテルで、私が予約したホテルだった。
彼の家から近い場所を選んだのは意図的だが、本当に近い距離に少し驚く。
「……はい」
私は彼と繋いでいる手を力強くし、頷いた。
かなり遅れてのチェックインなので、二人とも自然と足早だ。
彼の家でゆっくりしていたこともあり、ホテルに連絡してから、結構時が経過している。
そのため、ホテルが見え、安心した。
だが、同時に緊張もしていた。
ホテルに着くと緊張もいよいよというところで、彼と共に部屋まで足を進める際、緊張で足を止めたくなったほど。
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