200人が本棚に入れています
本棚に追加
私の姿を目に入れた瞬間、女性は冷たい目を私に向けた。
そして優君はというと驚いた表情をして、私に「胡桃」と言った。
私は咄嗟に「ご、ごめんなさい」と言ったが、どうしよう、と困惑している。
二人が気になって出てきたことはバレバレだ。
スニーカーの踵を踏み、扉を大きく開けてしまったことで焦って出てきたことはわかるだろう。
今さらだが、開けた先に二人がおらず、扉が当たらなくてよかった、と感じるほど気は焦っていた。
だが優君は私のほうへ歩みより、私の扉を持つ手を優しく引いて、抱き寄せる形に立たせた。
それからこの重い空気の中、まず口を開いたのは優君だった。
「胡桃、こちらは昨夜会った夏井の義妹の岡田さんだよ」
彼は私に疚しいことは何もない、と教えてくれるために紹介してくれたのだろう。
私は気まずかったが、「は、はじめまして、深田です」と小さな声で言った。
岡田さんは小さく頭を下げたが何も言わなかった。
たぶんすごく怒っている。
私にはそれが伝わり、怖さで彼のTシャツの裾を握りしめてしまった。
今回悪いのは私だ。
彼が紹介してくれるくらい、二人の間には何もないというのに心配して出てきてしまった私が悪い。
優君をとられたくないが、岡田さんに対して申し訳ない思いも生まれるため苦しい。
すると優君が「昨晩は岡田さんに“好きな人”って言ったけど、今は“彼女”」と言った。
それは岡田さんに向けての台詞で、私には意味がわからなかった。
「そうですか……」
だが岡田さんには伝わっているよう。
その声は平坦なものだが、彼にはちゃんと答えた。
最初のコメントを投稿しよう!