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きっと、彼にも緊張は伝わっているはず。
部屋に近づくにつれ、自然と握る手の力を強めていた。
そのため部屋に到着すると彼は私の緊張を緩めるためか「この部屋、外がよく見えそうだね」と、言ってまず部屋の一番奥の窓辺へと足を進めた。
もちろん私と手を繋いでいたため、一緒に進む。
この部屋は8階なので、彼の言う通り外の景色がよく見えた。
先ほど歩いときに見たイルミネーションの光が遠くで煌めいている。
「あ、やっぱり、よく見える」
彼が外を確認しそう言ったため、私も「はい。綺麗……」と、相づちを打つ。
「うん。綺麗だね」
「はい……」
私たちはしばらく無言で外を眺めていたが、私はそっと、彼を見上げた。
優君は真剣な表情で真っ直ぐ窓の外を見つめている。
シンガポールのホテルは日本と比べ高めで、その中でも彼の家から近く安めのホテルを選んだ。
そのため、この部屋は日本でいうビジネスホテルのよう。
でも彼と二人というだけで、まるで素敵なところに来たみたい。
こういうのをきっと、ロマンチックと表現するのだろう。
「胡桃?」
すると彼が私を見下ろしたので、視線が強く絡んだ。
胸の鼓動が大きく高鳴るのを感じる。
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