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優君と岡田さんが、これまでどんな様子でいたのかは、わからない。
押し倒せるほどの近い距離でいたのだろうか、と考え私はショックを受ける。
彼女がもう少しおせば二人は結ばれるほど、近い距離でいたのだろうか……
私が岡田さんをぼんやりと見つめていると、彼女の目は優君へ向く。
「お幸せになんて言わないけど……また義兄たちとご飯食べましょう」
岡田さんがそう言うと、優君はあっさりとした様子で「うん。また皆で」と言った。
「それじゃあまた」
岡田さんはそう言うと、最後に私に視線を向けた。
その口元は緩やかで、余裕を感じる。
きっと私の顔が不安丸出しなせいだろう。
だが、隠せない。
彼女は今度こそ踵を返しエレベーターのほうへ消えた。
岡田さんがエレベーターに乗るまで私たちは彼女のほうを見つめていたが、見えなくなるとすぐ優君が私に「中に入ろう」と言った。
「はい……」
私が小さな声で同意すると、彼は私の背に手を当てて部屋の中へ誘導する。
やっと二人きりになれたというのに意識が岡田さんのことへ向き、先ほどまでの幸せな気持ちに侵入するよう。
そのため私は玄関に入るとすぐ「優君」と言って彼の胸に抱きついた。
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