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日本にいたときに優君と動物園でデートをしたことはなかったので、なんだか新鮮だった。
ただ園はとにかく広く、彼がいなければ迷子になりそうなくらいで、園内マップを見て動ける優君を頼もしいとすごく感じた。
今回の滞在の中で彼と外ではじめて食事をしたときから、優君のことをすごい、と感じたのは何度目だろう。
今、私の彼氏カッコいいんです、と周りに自慢したいくらい優君に心が向いている。
これまであまりノロケた経験がないため、自分でも驚きの変化だと思う。
そのため、時刻が午後に差し掛かるころ、明日日本に帰らなければならないという現実がとても嫌なことに感じていた。
「疲れた……?」
これから動物のショーがはじまるというときに、私は無意識にため息をついた。
「いえ、全然。楽しいです」
「……本当?俺が行きたいって言ったから……」
「私も行きたいって言いましたよ」
彼が行きたいと提案したあと、私だって乗った。
しかし彼は心配そうに、顔を歪める。
「……ごめんなさい、明日のこと考えてました」
そのため、正直な気持ちを伝えた。
楽しいときに口にしたくなかったが、すれ違いたくない。
「……そっか」
「はい」
すると彼は「胡桃をこっちにさらっちゃおうかな」と言った。
その声は明るいが、顔は切ない。
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