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優君の額には汗が滲んでいる。
若干息がきれている。
わからないようにしてくれているけど、急いで来てくれたのが伝わる。
「お仕事、大丈夫なんですか?」
「うん。大丈夫」
彼は私の頭を優しく撫でた。
きっと、私を心配させぬようにしてくれているのだと思う。
「胡桃から、いい匂いがする」
「え?」
「なんか、花みたいな……」
私を覗いていた彼が、目を閉じ高くて形のよい鼻を近づけ、匂いを嗅ぐ仕草を見せる。
私の胸がドキリと音を立てた。
「そうですか……?」
「うん。なんだろう」
彼が不思議そうに言った時、私はハッとした。
もしかすると、カサブランカの香りが移ったのかもしれない。
ユリは花が開きやすい。花屋で買った時は蕾だったが、彼の部屋に飾った時、花が開きかけたので花粉を取った。
ちなみにEiry でユリを売る際も、お客様の手が花粉ので汚れぬよう、花粉を取っているのだ。
その時に匂いが移ったのだろうか……
すると急に彼が私にキスを落とした。
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