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しっとりとした彼の唇は朝と同じで甘い味。私をドキドキさせる味。
周囲のざわつきが耳に入らなければ、思わず目を閉じてしまいたくなる。
しかしそうではないので、唇が離れた時、私は「優君……」と言って、唇を隠すようにきつく結んだ。
すると彼が小さく吹き出す。
きっと私の顔が赤いせい。
今の私は羞恥でいっぱいだ。
「やっぱりいい匂いがする」
しかし彼はまだ気にしている様子だ。
彼の顔はまだ近いまま。
私の香りを嗅ぎつつ、見つめるため胸のドキドキがひどくなる。
またキスされてしまうのでは、と感じたが、彼は屈めていた腰を正した。
それに、少しだけ残念に思う。
もう、次に会えるまでキスはできないのだから。
本心はもっとキスしたいと思っている。
「優君」
「ん?」
「実は本当は秘密にしようと思ってたんですが、部屋にお花をいけてきました。その香りが移ったのかもしれないです」
代わりに私は彼に内緒にしようとしていたことを伝えた。
「そっか、ありがとう。帰るのが寂しかったけど、楽しみになった」
もっと詳しく聞かれるかと思ったが、彼はそれだけ言うと、柔らかい笑みを見せるだけ。
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