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私も彼に微笑み返す。
きっと彼は私のメッセージに気がついてくれるに違いない。
彼は私が搭乗口に行かなければならない時間ギリギリまで、側にいた。
行きは花カゴを手にしていたが、今は身軽なので彼の手をずっと握っている。
彼の手の温もりが、時間が進むにつれ私を寂しくさせる。
時間が止まればいいのに……
口にできないけれど、心で何度も言った。
きっと彼も同じことを思っているはず。
いよいよ時間がくると、ますます寂しくなる。
しかし彼は明るく言った。
「胡桃、またすぐに帰るからね」
「はい。待ってます」
「うん」
今度はちゃんと次がある。
私はしっかり彼の目を見て伝えた。
すると彼の顔が近づく。
私は瞳を閉じて、周囲の目もあるにも関わらず、自らの意思で受け入れた。
優君から離れながら、私は何度も後ろを振り返り彼に手を振った。
彼も同じ、何度も手を振り返してくれ私を見送ってくれた。
優君の姿が見えなくなると、もう一度走って彼の見えるところまで行きたくなったが、私は下唇を噛み締め歩き始める。
なんだか今別れたのにもう会いたい……
彼と全てが繋がったことで、彼を求める気持ちが強くなっているのかもしれない。
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