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しかしここで泣いてしまうと、勘違いさせてしまう。
私は両手を顔の横に小さく広げていた手を伸ばし、彼の首の後ろに巻き付け「優君好き」と言って自分に近くした。
彼の匂いが近くなる。
何度も感じたことのある香りだが、今日は特別甘い。
もっと嗅ぎたいため、彼の横顔に私の顔を擦り付ける。
「……胡桃」
彼が私の耳元で私を呼んだ。
ただ名を呼ばれただけなのに、胸が熱くなる。
そして、身体も。
「私は大丈夫ですから、全部もらってください」
これ以上優君に心配されると、私は泣いてしまうかもしれない。
私の腕は震えていた。
「……うん」
そう言った彼の声も泣きそうに聞こえたのは、きっと気のせい。
なぜなら彼は私の耳を優しく食み、「可愛い、好きだよ」と言った彼は、余裕な様子だったように感じたから。
「私のほうが……大好き」
だから私も余裕なフリをし伝えたが、私のドキドキはバレバレだろう。
だって優君は小さく笑った。
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