プルメリア

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「剣山を隠すようにお願いね」 店長が指示を出したので、私は彼を見上げた。 店長の顔は近い。 「はい」 私が頷くと店長が微笑んだ。 私が前、大好きだった笑顔。 胸がドキドキしてやまなかった笑顔だが、今は冷静に見れるから不思議だ。 今の私の胸のドキドキはすべて優君のもの。 もう店長にはときめかなくなっている。 すぐに店長から視線を逸らし、再び手元を見つめると、指示通り剣山を見えなくするよう意識し生ける。 私が生け終える頃、治人さんが出勤してきた。 今日は市場に行かないので朝から店に来たのだが、彼も私と同じで、いけばなのことを気にしたので、今度は私が説明した。 完成したいけばなは店長が持っていくことになった。 私は治人さんと少しの間、二人きりになる。 すると早速治人さんが優君のことを聞いてきた。 「彼とは順調か?」 「はい。おかげさまで……」 私の顔が緩んでしまう。慌てて頬を両手で押さえた。
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