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「ははっ、照れて可愛いなぁ胡桃ちゃん」
治人さんの言葉は優君のよく言う“可愛い”とは全く質が違う。
親戚のおじさんが子供に言うような感じだ。
優君に言われるとすごくドキドキするが、今は妙な照れを感じるだけ。
「もう……治人さん……からかわないでくださいよ」
私が少し唇を尖らせ言うと治人さんが笑った。
「ごめんごめん、でもよかったな、ほんと」
治人さんは私の頭にぽんと手を弾ませた。
いつも近くで私の応援をしてくれたのは治人さんだ。
治人さんの顔は優しくて、本心から安心してくれているのが伝わる。
「はい……ありがとうございます。会いに行けたから復縁できたので、本当に感謝してます」
「仲直りは会うのが一番だよな」
「そうみたいです……」
もし会いに行けなければ、今日もきっと悩んでいた。
会いに行けて本当によかった……
「次はいつ会えそうなのか?」
「えっと、年末に纏まった休みが取れるそうなので帰って来てくれるそうです」
「そうか、じゃあ胡桃ちゃんも上手く休みを取らないとな」
「はい」
私は休みもそうだが、彼からプロポーズをされたことが頭の片隅にずっとあり、いつまでEiry で働けばいいのかとか、いつシンガポールに行くべきなのか、とか密かに考えてしまうことがあった。
まだ互いの両親に挨拶もしていないというのに。
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