134人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
「で、ですけどすぐにというわけではないんです……そういう約束をしたのはしたのですが……」
治人さんに誘導されるように言ってしまったが、まだ何も決まっていないので、しまった、と後悔した。
すると治人さんは私の頭の上で手をもう一度ぽんと軽く弾ませた。
「わかってる、大丈夫」
「……はい」
なにも今すぐ動くわけではないということをわかってもらいたかったので、治人さんの言葉にホッとした。
「でも留実ちゃんには内緒にしていた方がいいと思うよ」
治人さんの想像することはなんとなくわかる。
留実ちゃんは、きっと黙っていられないだろう。
「あ、はいっ……」
なのでもちろんそのつもりだ。
しかし治人さんにも話すつもりはなかったため、気を付けなければならない。
優君とよりがもどったことは私の心はもちろんだが、顔つきも緩んでしまっているようだから。
私は表情を正し治人さんを見つめる。
治人さんは「よし仕事するか」と言って、いつもの元気な笑顔を向ける。
「はい」
今日も頑張ろう、と意気込んで私は返事をし、仕事にとりかかった。
最初のコメントを投稿しよう!