タムラソウ

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だから今の萩原が楽しそうに見える。 それに、南田さんも……。 萩原は背は170㎝に届かないくらいの身長で、男にしては可愛らしい顔立ちで人懐っこく、周囲から犬っぽいと言われている。 例えるなら子供の柴犬だろうか。 年上には特に可愛いと言われ、須賀原ほどではないもののわりとモテる部類に入る萩原だけれど、南田さんから見たらどうなのだろう。 たしか、萩原は彼女がいなかったはず。 南田さんは須賀原に興味を持っていたけれど、須賀原とは全く違うタイプだ。 須賀原が深田さんに走っている今、南田さんは心がフリーの状態であるはずだ。 この前の合コンでもいい人はいなかったと言っていたから。 南田さんと萩原の楽しそうな空気を横目に、自分の席に腰をおろした。 だが、視界の端に映り込む二人に落ち着かず、座ったばかりだというのに立ち上がった僕は休憩室に向かった。  外はとても晴れていたから、四月とはいえ暑かった。 なんとなく、冷たい飲み物を一気飲みしたい気分。 そう思い、350mlのスポーツ飲料のペットボトルのボタンを押した時、南田さんの好きなカフェオレが目に入った。 お礼はカフェオレでいい、といった南田さんとのやりとりを思い出し、自然と僕はカフェオレ分の金額を投入し、ボタンに手を伸ばしてた。
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