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きっとほとんど毎晩優君の声を聞いていたため、彼に会えるとわかっている今日だから、勘違いをおこしている。
「おまかせですね、かしこまりました」
胸をドキドキさせながらも、注文票に文字を書き入れていく。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「いえ、ありがとうございます」
柔らかく穏やかな声は、かなり近い。
優君でない男性の声にどぎつかせてしまうなんて、私はひどいかもしれない。
「あ、あの、お客様のお名前とお電話番号をお伺いしてもよろしいですか?」
声が震える。
すると答える代わりにお客様の小さく笑った声がした。
きっと、胸のドキドキと緊張が伝わったのかもしれない。
どうしよう、と思った時、お客様が「須賀原です」と言った。
私は驚きで何も言えないでいると、お客様は「番号は店員さんがよく知っていると思います」と、愉快そうに言った。
「ゆ、優君……?」
もう、優君で間違いがないだろう。
店の電話だけれど、店員口調は完全に崩れた。
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