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彼は明るい声で「はい、そうです」と言って笑った。
やはり優君だ。
頭の中が彼でいっぱいになる。
「優君……ビックリしました……」
「ごめんごめん、俺だってわかった?」
苦笑しながら尋ねられるが、私は見えないというのに首を横に振った。
「お店の電話なので優君本人だとは思わなかったですけど、優君の声にすごく似てるなぁってずっと思ってて、もしかすると優君のことばかり考えてたから耳がおかしくなっちゃったのかなって思ってました……」
正直はところを話すと優君は「嬉しいことを言うね」と言った。
耳はおかしくなっていなかったよう。
それに浮気をした気分だったため、優君でホッとする感じもした。
「本当にそう思ったので……」
「そう、素直な胡桃、可愛い」
店の電話だけど、まるでいつもの会話だ。
なんだか変な感じだけど、胸が温かくなった。
「優君はすぐにわかりましたか?」
「うん。胡桃の声はすぐにわかるよ」
彼だって嬉しいことを言ってくれる。
けれど、それは照れ臭くて言えなかった。
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