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全身から吹き出す汗は、暑さよりも緊張から来ているかもしれない。
心臓の音、亮太に聞こえるんじゃないかとヒヤヒヤする。
心の中で「平常心」と唱えながら話を続けた。
「眩しい光が差して目を開ける。すると」
「すると?」
あたしは手術台に横たわっていて、マスクをつけた青い服の男があたしを見下ろしている。男はメスを持ち、麻酔なしに躊躇なくあたしの皮膚を切り刻んでいくのだ。
「あたしは悲鳴を上げて、激痛に苦しみもがいて、ガクッと気を失った途端目覚めるの。それで、あれは夢だったって気がつくんだけど、体はまだ夢の痛みを引きずっている。でもね」
上り坂はもうすぐ終わる。あたしの緊張もマックスへ。
足を止めて亮太を見上げると、亮太もピタリと立ち止まる。
「亮太に会うと、ここが現実の世界なんだってホッとする。だから、つまりね」
その時、亮太の長い腕があたしの頬へすっと伸びてきた。
「亮太、あたしはあなたが」
「ここは、夢の世界だよ」
「え」
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