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 ヌルッと生ぬるい、水の感触があった。  眩しい光に目を開くと、いつの間にかマスクをして青い服に着替えた亮太があたしを見下ろしていた。 「亮太?」 「始められます」  誰かが亮太にモニターを向ける。  そこには高い山のような波形がいくつも記されていた。 「もう一度、頬を裂こう」  メスを持った亮太の腕が伸びてくる。あたしは恐怖に絶叫した。 「イヤ~!!」  ズサッと鋭い痛みに身悶え、モニターに小さな山が記録される。  あたしのSNSに「高額のアルバイトやらない?」と中学の同級生だった亮太からメッセージが届いたのは二週間前のことだった。亮太はあたしの初恋の人で、数年前に事故で死んだと友達から聞いていたけど、元々信じていなかったから、やっぱりねと思った。 「痛みに関する簡単な実験だよ」  医療機器メーカーの名刺を差し出しながら、昔と変わらず亮太は爽やかに笑った。 「次はもう2cm深く切ってみようか」 (やめ……)  容赦なく振り下ろされたメスが左目の下を引き裂いていく。生ぬるい血液が春雨のように降り注ぎ、あたしは(これは夢だ)と思いながら、ガクッと意識を失った。 (了)
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