0人が本棚に入れています
本棚に追加
「前に言ったろ、凪沙が何を考えてるかわからないって」
ズキッ、と胸が痛む。
私は何も言わずに、小さく頷いた。
「でも、俺も凪沙のことをわかろうとしてなかったんだなって……」
(違う……)
「それなのに、一方的に――」
「違うよっ!」
海斗の言葉を遮るように叫んで、一歩前に出る。
「私が……本音を言うのが怖かったから、言ったら嫌われると思ったから、言えなかっただけで……」
そうだ、嫌われるのが怖かったんだ。
嫌われるくらいなら言わない方がいいって思ってたんだ。だから、真夕に何か言われても、SNSに書き込むだけだった。
「俺も、訊いてあげれば良かったんだって思った」
伸ばしていた手がゆっくりと開き、指先が私の頬に触れる。
「ゆっくりでいいよ、どんなに時間がかかってもいいから」
海斗の手の甲に、掌を重ねた。
「凪沙の口から訊きたい、凪沙の気持ちを教えて――」
「うん……」
人を好きになるきっかけは、それぞれ違うと思う。
最初のコメントを投稿しよう!