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「いいわよ。恥ずかしいっ。こんなところで開かないで!」
レモは頬を赤く染めて、あわてて夏実を制止した。
「うん、面白いのはホントだよ」
夏実はサイトを閉じながら、力をこめて言った。
「ありがとう。でも、どっかで読んだことがある話だな、ありふれたキャラだな、って思ってるのよ」
「それでも、書くのやめないの?」
「やめないわよ。やめたら、そこで終わりだもん」
「終わり?」
「うん、ダメだ、ダメだって思いながらも、書き続けていくうちに、何となく、だんだん自分らしい話に、なっていく、なんてこともあるからね」
「ふうん」
「だから、夏実も簡単にあきらめちゃダメよ。せっかく、自分から『歌を作る』って宣言したんだから」
「それよ、それ!」
夏実は、夏休み前の「コーラス部」の練習を思い出し、後悔から両手で顔をおさえた。
「あたしったら、どうして、あの時に、あんなことを急に言っちゃったんだろう…!」
7月最後の練習風景を二人は思い出した。
部長のアリスが、全部員を前に、合宿で練習する曲の確認をしていた。
こうしないと、歌うべき楽譜を忘れるおバカや、歌わない楽譜を大量に持ってきてたりするマヌケな生徒が続出するからだ。
白金聖学院のコーラス部は、合唱コンクール出場を目ざすようなエリートコーラス部とはまったく違い、自由でユルい。
それでも11月の文化祭で披露する曲を、合宿では集中的に練習しなくてはならなかった。
合唱曲の定番、J-POP、それに加えて、キリスト教教育のミッションスクールらしい特徴があるのは、ゴスペルアレンジの賛美歌など。
また毎年1曲は、2年生の生徒が作詞(または作曲も)する新曲を入れるのが楽しい恒例だった。
今回は、夏休み前にアリス姫しか曲を作ってこなかったので、アリス姫の作詞作曲の『青春の光』ですんなりと決まるはずだった。
…それを誰かがドンデン返しさえしなければ、決まるはずだった。
アリス姫は、皆に確認するように言った。
「私しか曲を提出して無いのだけど、この曲で今年は決めても良いのですか?」
『青春の光』の楽譜をつかんでヒラヒラさせながら、アリス姫は一同に問うた。
『青春の光』は、前週の部活時間で、皆は聴いていた。
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