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「私は、待つ、のでいいわ。ただし、最終日の4日目は朝食後には、すぐに帰京だからバタバタするでしょ。3日目の夕方ってことにしない?」
アリス姫は、自信があるのだろう。きっぱりと言った。
「わかりました。3日目の夕方までには作ります」
夏実は答えた。
「皆さんは?」
真治は再び、メンバーたちの顔を見た。
夏実は、一瞬、シーンとなっている周囲の反応にドキドキした。
しかし、全体にいつもユルい部員たちは、「待っててイイんじゃん?」とか「別に」とか「合宿のイベントになって面白そう」と、皆、待つことに賛成だった。
真治は、これで音楽センスの向上に意義がある合宿になりそうだ、と笑顔で結論をまとめた。
「わかりました。では、皆さんも賛成のようですので、合宿の最終日まで、夏実さんの新曲の作詞を待って、そこで決めることにしましょう」
ユルい部員たちは、パラパラと拍手をした。
アリスも、
「夏実の作品が楽しみだわ」と優雅に微笑んだ。
皆の拍手をあびて、すでに名曲が出来たような得意な気分になっている夢見がちな夏実。
その横で、冷静で現実的なレモは、これからの展開が気がかりで青ざめていた…。
「夏実ったら、どうして、急にあんなことを言ったの?」
<海ほたる>で、潮風に長い髪をようになびかせながら、レモはため息をついた。
「どうして、って…」
どうしてかと聞かれて、改めて、あの時の自分の心理を考える。
すると、副部長の峰村真治への複雑な気持ちがあったことを自分でわかった。
誰にでも優しくて真面目で礼儀正しくジェントルマンな真治は、1年生の時から、サークルの女子たちの間では好感度1位だった。
スッキリとした美しい顔立ちや、スマートな身のこなし、父親が系列大学の教授、ということにおいても、真治は純粋な「王子様キャラ」だった。
テノールの透明感ある声で歌が上手いだけでな
く、ピアノを弾かせても、上品で正確な腕前だった。同級生の1年女子はもちろん、年上の2年、3年の女子たちにも人気があった。
真治には特定の彼女はいないが、彼が大切に思っているのは、「倉田アリス姫」だということも、みんな、わかっていた。
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