溶けない氷

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恭也は右手に持つ携帯をぎゅっと握ると通話ボタンを押した。 「ごめん!あとで掛け直す!」 口早に言い放つと電話を切った。拓海が溜息をついている姿が容易に想像できたが、今はそれどころでは無いと思った。 乱暴に携帯をポケットに押し込むと少しづつ離れて行く実果子の背中を追いかけた。 きっと素直にはならないであろう実果子になんて声をかけようか頭をフル回転させた。 直ぐに追いつく距離。 言葉は見当たらなかったがとにかく夢中で声を出した。 「待って!」 ピタリと足を止める実果子。 向こうを向いたまま黙っている。 立ち止まってくれたことに恭也はホッとしていた。 「もう遅いし、送っていきます。」 息を切らしながら実果子の背中に言った。 多分、断られるだろう、そう思いながら実果子の反応を待つ。 重い沈黙。 きっと今なんて断ろうか考えているに違いない、そんな後ろ向きな事を考えながら実果子の言葉を待った。 自分のネガティブ思考には嫌になるな、そう苦笑した時、実果子の細くて夜の闇に消え入りそうな声が聞こえた。 「どうせ…」 「え?」 恭也は耳を凝らして聞いたがはっきりとは聞こえずに聞き返した。 少しの沈黙のあと、今度はさっきよりも
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