溶けない氷

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少し大きな声で 「どうせダメって言っても付いてくる気でしょ?」 と実果子が言った。 実果子がどういう気持ちでそう言ったか恭也には図ることができなかった。 ほんとは拒絶したいのか、それとも強がりで一人でいたくないのか、一瞬の間にそんな事を考えたが、今はどうでもいいということにすぐに気がついた。 恭也がしどろもどろになりながらはっきりと答えられずにいると実果子はスタスタと歩き出してしまった。 「あっ、待って」 恭也は素っ頓狂な声を出しながら右足から順に前に出した。 横に並んでいいものか分からずに実果子の少し右斜め後ろに収まった。 実果子の横顔が見えそうで見えない。 こういう時は何か声をかけた方がいいのか、それとも黙っていた方がいいのか、恭也はそんな経験値など持ち合わせていなかった。 そんな事を考えながら黙ったまま実果子の後を付いて行った。 やがて大通りから細い道に入って少し歩いたところにあるマンションにたどり着いた。 その間、お互いに言葉を発することなく、ただ足だけを動かした。 実果子がピタリと足を止めた。 反射的に恭也はマンションを見上げた。10階建くらいの一般的なマンション。オートロックも付いている。 「ここだ
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