第2章 No sugar,a little milk

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一人でも胸の内を聞いてもらえる人がいるというのは心強いもので、思ったことを思ったままその場で言ってしまう彩葉に相談すれば、自分がくよくよ悩んでいたことが馬鹿馬鹿しく思えるくらいスパッと真っ二つに切ってくれるのだ。 自分はなんと心強い友を持ったのだろう、と何度も思った。 同じ学部の男の子に執拗な誘いを受けて困っていた時も彩葉がその男に 「嫌って言ってんの!しつこいんだよ!!」 とキャンパス内で大声で言い放ち、周りの目を気にしながら走り去る男の子に追い討ちをかけるように 「鏡見て出直せー!!」 とトドメを刺したことがあった。 おかげでその後は、今までの事が嘘だったかのように執拗な誘いもなくなり、目さえも合わなくなった。 とはいえ、一緒にいた実果子もほかの生徒達から敬遠されるようになったことは言うまでもないが。 それでも、実果子と付き合いたい男の子達はなんとかアプローチして、見事付き合うことになった人もいた。 別れも経験して大人になったつもりでいた。 彩葉には、大学を卒業して就職したら結婚するという彼がいた。 しかし、大学一年目の冬、あっさりと終わってしまった。 いつも笑顔だった彩葉が痛々しいほどの笑顔で大学に来た時はつられて顔を見た瞬間に涙が出た。 一人暮らしをしていた彩葉の家で夜通し泣き腫らし、自分たちはまだまだ子供なのだと思った夜があった。 薬学部より2年早く彩葉は卒業して日立総合病院に就職した。 彩葉以外にあまり友達はいなかったが、自然に他の学生達とも仲良くなっていった。 外では彩葉に仕事の話をいつも聞いていた。 まるでテレビドラマから飛び出して来たような太っちょの婦長の話や同期で入った看護師が遊ぶ事ばかり考えていて仕事中にあくびばかりしている事や先輩なのに頼りにならない先輩の話など話が尽きる事がなかった。 そんな時、日立総合病院の外科医が実果子の通う大学に講師として出向くという話を聞いた。
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