第2章 No sugar,a little milk

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そこまで言うと神木は少し口の端を上げ、笑顔を見せた。 その顔に実果子は救われた気がした。 ついさっきまで失礼な事を考えていた事を心の中で静かに詫びた。 神木の話が終わり3人になると君江は力が抜けたように勝の寝ているベッドに突っ伏した。 実果子は君江の肩に黙ったままそっと手を置いた。 果奈子はベッドの反対側で勝の手を握って神妙な顔をしていた。 各々、黙ったまま思い思いの思考を巡らせた後、君江が静かに話し出して、その日は君江が病院に泊まることになり、実果子たちは帰るよう言われた。 「お母さん、お父さん目が覚めたら夜中でもいいからメールしてよ!絶対だよ!」 思春期だというのに勝と仲が良かった果奈子は君江の腕を掴んでそう言った。 「はいはい。実果、果奈のことお願いね。」 果奈子を軽くあしらうように言って君江は実果子に三千円を渡して、 「何か食べて帰りなさい。」 と言った。 果奈子は自分だけ子供扱いされてるみたいだとぶうぶう言っていたが、勝に溺愛されて育った果奈子はまるで駄々っ子の様だ。 実果子は人に甘えるのが苦手で全部抱え込んでしまうところがあり、果奈子と1つしか年が変わらないのに変に大人びていた。 そのせいか君江は実果子に果奈子の事を頼むことが多かった。 実果子も特に嫌な訳でもなく、小さい頃から「みかちゃんみかちゃん」と後ろをついて回る妹が可愛くて大好きだった。 それは今でも変わらず二人は仲がいい。 対照的な二人だがそれがまた、お互いに無いものを与えあって補っているのかもしれない。 少しむくれヅラの果奈子をなだめながら実果子は小さい頃によく勝に連れて行ってもらったうどん屋に入った。 “あたりや”と書かれた暖簾がこの店の古さを物語っている。
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