第2章 No sugar,a little milk

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店に入る頃には果奈子のむくれヅラも元どおりに戻っていた。 実果子にとって果奈子の機嫌を直すことは幼子が積み木を積むことより容易いことだった。 これは果奈子の将来の旦那さんにいづれ伝授するつもりでいる。 二人は少し奥にあるテーブルに座り、注文を済ませる。 アルバイトであろう自分たちとあまり年が違わない女の子が奥にオーダーを通すとひょこっと店主が顔を覗かせた。 「やっぱり実果ちゃん果奈ちゃん!」 店主の笹山が頑固そうな顔をふにゃっと歪ませ二人をみた。 その顔を見たアルバイトの女の子は驚いた顔をしている。 笹山がこんな顔を見せるのも実果子たちがきた時ぐらいなのだろう。 二人にはこのにやけた顔が笹山なのだが。 「こんばんは。お久しぶりです。」 実果子が言うと果奈子は後ろを向いてブンブンと手を降っている。 「珍しいね、二人で。ちょっと待ってな。直ぐ持ってってやるから。」 そう言うと二人の返事を待たずして笹山は奥に戻った。 実果子は果奈子に顔を少し近づけて小さな声で、 「お父さんのこと、まだ言わないで。心配させるといけないし。おじさんの事だから直ぐにでもお見舞いに行くと思うの。お父さんの意識が戻ってからお母さんにも相談しないと。いい?絶対に勝手に言っちゃダメだからね。」 と少し語気を強めて言った。 「わかってるってー。」 実果子の言いたいことの意味が分かっているのかいないのか、果奈子の返事はなんとも呑気だ。
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