第2章 No sugar,a little milk

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実果子は果奈子をここへ連れて来た事を少し後悔したが、勝が倒れた事でいろんな事を思い出してここのうどんが食べたくなったのだ。 不安な気持ちをそのまま家へ持って帰るのが怖かった。 しっかり者で大人びた実果子もまだまだ高校生だ。 17年間しっかり者の姉でいたせいで感情をうまく表に出すことができなくなっていた。 周りには(特に果奈子には)そんな不安を悟られまいと振る舞うのが日常になっていた。 「はいよ!」 笹山が2つのどんぶりを手に実果子たちのテーブルに置いた。 いつもなら腰をかけて世間話をするのだが、実果子たちの後に客が入って来たためうどんを置くと直ぐに中へと引っ込んだ。 実果子は内心ホッとした。 必ず、おとうさんは元気か?と聞かれるからだ。 うまく誤魔化す自信はあっても、やっぱり嘘をつくのは後ろめたい気持ちがあったからだ。 「果奈、ささっと食べて帰るよ。」 実果子は未だ携帯の画面を見ていた果奈子に食べるように促した。 「うん。」 そう言いながらうどんには目もくれずテーブルに置いた携帯を見ながら割り箸に手をかけている果奈子を見て実果子はため息をついた。 これもいつもの事だ。 ただ今日はいつもと違って果奈子のメールの相手は君江だろう、と分かっていた実果子はそれ以上何も言わなかった。 「お母さんなんて?」 代わりにそう聞いた。 「うん、まだ起きてないみたい。早く寝てちゃんと学校行けって。」 そう言って果奈子は初めてうどんを見て一口食べた。 その後は二人とも何を言うでもなくうどんを平らげ早々に店を出た。 笹山に少し引き止められたが明日が早いと言って帰ってきた。 実果子たちの家はごく普通の戸建てで似たような家が並んでいる。 二人は真っ暗な家に帰ってきて、改めて今家には誰もいないと言う事を考えてしまった。 実果子はリビングの電気を点け、果奈子に先に風呂に入るように促した。 時計は10時を回っている。 実果子はリビングに置かれたソファに沈み込みため息をついた。
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