一章「一日目」

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1  花崎学園の高等部は、三階が一年生の教室、二階が二年生の教室、一階が三年生の教室という配置になっている。イレギュラーな配置になっている理由は、職員室が一階にあるため、進路相談のためのアクセスの利便性を向上させる狙いがある。  しかし、今は文化祭で、中等部と高等部すべての教室が、文化祭用に違う場所に配置されている。飲食店が集合することや、同じ内容のクラスの出し物が並ぶことがないようにしているのだ。  そのため、保谷吾郎は、学園内で配布されたパンフレットを開きながらでないと、道に迷いそうになった。  パンフレットには、地図が載っている。しかし、度重なる建て増しで造られたこの中高一貫校は、つくりが複雑で、慣れていないとすぐに迷ってしまう。保谷吾郎は、ここの生徒ではない。故に、かつての仲間が在籍する二年七組が使用するクラスに、なかなかたどり着くことができなかった。  無機質であっただろう教室は、どこも華やかに彩られ、さらにクラスはシャッフルされているのだ。地図がなくては、いくら在校生でも迷ってしまうだろう。  四苦八苦して、中等部の三階にある一年三組のクラスがようやく見えてきた。現在は、高等部の二年七組が使用している。  かつての仲間に会おうと、教室に入ろうとした。しかし、中は賑やかなのに、嫌な予感がした。残暑で暑く火照った身体に、悪寒が走る。
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