二章「二日目」

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「説明くらいはしてくれるんだろうね」  感情を消した声で、武蔵は雅弘に言った。 「もちろん。じゃあ、ひとつずつ説明しようか。まず、この事件は綾藤八重乃がすべての発端だったんだ」  三年前、綾藤八重乃をスパイとして『ゾロ』に送り込んだのが柴峰先生。八重乃の母親が三葉。八重乃に曲がった恋愛感情を描いていたのが保谷吾郎。そして、例の小説の投稿者『アンチZ』存在。 「ここまではいいね?」 「じゃあ、俺は?」 「それは後で話す。おそらく、この三人と竹彦は、綾藤八重乃の病室で出合い、『アンチZ』を立ち上げて、今回の事件の計画を練ったんだ。投稿者『アンチZ』は、人間ではなくグループだと僕は考えてる」  雅弘は、保谷の様子を伺う。保谷は、目を背けていた。武蔵も何も言わない。当たっているということだ。 「その計画の中で注目して欲しいのは、ビンゴゲームだ」  瑞穂に、タブレットを要求する。画面を起動させ、ビンゴのページを表示する。  すべて問題が、マスの上に公開されている。タップをしなくてもいいようになっている。ビンゴゲームが終わったことを示しているのだ。 「正解側の人、つまり、いじめっ子側のメンバーなんだけど、これってすごく変だよね」 「どこが?」  武蔵は、怪訝な顔をした。「全部『ゾロ』のメンバーで、綾藤をいじめた連中じゃないか。しかもそいつら全員に復讐した」 「そう、このゲームの犯人は、綾藤八重乃の自殺の原因をつくった者すべてに復讐するためにつくられたものだ。これは間違いないと思う。でもさ、自殺の原因をつくったのは、この七人だけじゃないよね」 「何が言いたい?」 「ビンゴは三×三の九マス。ここに、学歴重視のプレッシャーをかけた八重乃の母、三葉と、『ゾロ』にスパイを送り込んだ柴峰先生を入れれば、ちょうど九人になる。人数とマス目が一致するんだ。なのに、なんで犯人は七人でゲームを止めちゃったんだろう?」 「犯人の気まぐれというのは?」 「ナンセンスだね。僕はこう考えるよ。綾藤三葉と、柴峰先生は、犯人側の人間なんじゃないかってね」  最初からおかしいと思っていたのだ。異物混入事件で、ハエが入れられていたのは何故か二匹だ。一匹はカレーまみれだった。もし、その一匹は、綾藤三葉によるものだとしたら、共犯である柴峰先生の目が泳いだのも頷ける。
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