二章「二日目」

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 雅弘の推理は続いた。 「それともう一つ、キーワードは『7』」 「『7』?」 「そう。不正解側の人たちの名前を、左から順に縦書きで並べてみて」  瑞穂は、タブレットのメモ機能を活用して打ち込んだ。 アヤトウミツハ オエウンタチソ ヤガゴテニダモ ギキウンシコト コイメシユタト ウナグズウロウ シバミネコウキ  七文字の名前が七人で、七×七のビンゴ用紙が完成した。 「僕は最初、アヤトウミツハがこの中隠れていたから、綾藤三葉の単独犯じゃないかと疑った。この手の犯人は、自分の象徴を残したがるからね。でも、隠されていたのはそれだけじゃなかった」  雅弘は、タブレットの画面を指した。 「シバミネコウキ。一番下に隠されていたよね」  武蔵は、腕を組んで黙っている。続けろということだ。 「そしてもう一つ。右上から左下にかけて、斜めに文字が隠されているよね」  ハチニンメナシ。つまり、八人目のいじめっ子は存在しないという意味だ。その証拠に、この三つの名前と文をなぞれば『Z』という文字が浮かぶ。やはり、標的は『ゾロ』のメンバー七人だと示しているのだ。 「つまりこれは、一つのビンゴをやっているようで、もう一つのビンゴゲームが平行して存在したんだ」  それに気づいた保谷は、驚愕を露わにして武蔵を凝視した。 「やっぱり騙されてたんだ」  雅弘は嘲笑を浮かべた。「僕たちがいじめっ子の八人目だって言われたんでしょう。でも残念。それ、言った方の罠なんだ」 「罠?」  保谷が訊いた。 「なるほど」  瑞穂が、話に追いついた。「アンタを記者たちの前に晒して、すべてを告白させる。そして、暗号を解読したとき、騙されたと気づいて絶望する。綾藤八重乃が許してくれるなんて嘘。要するに、主犯はアンタを最初から社会的に抹殺することが目的だったって訳。まあ、社会的に抹殺されることは、アンタにとってどうでも良かったみたいだけど」  保谷は、再び武蔵の方を向いた。武蔵は、腕を組んだまま顔を伏せている。 「貴様!」  保谷が、武蔵に掴みかかろうとした。だが、武蔵の右フックを食らって返り討ちに遭う。保谷は床に尻をつけた。  当然の結果だと思い、誰も止めようとはしなかった。 「話の続き、いいかな?」  雅弘は、耳を掻いた。
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