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「ところで」
瑞穂は言った。「マー君は、いじめについてどう思った?」
瑞穂と喧嘩したときのことを思いだした。
「まだあのことを根に持ってるのか。あれは僕の理解不足で……」
「そうじゃない」
瑞穂はかぶりを振った。「今回の事件を通して、マー君はどう思ったのか聞きたいんだ」
熱っぽい視線を向けられた。どうしても聞きたいらしい。
正直なところ、雅弘はこの場から逃げたかった。何も言葉が浮かばないのだ。謎解きは好きだ。友達をつくることも嫌いではない。だが、相手を理解しようする事とは違う。だから、いじめはやってはいけない行為などと、漠然とした回答しかできない。瑞穂は、そんな答えでは納得しないだろう。
思案する時間を稼ぐ方法を思いついた。
「後夜祭、二人だけで開かないかい?」
「え?」
「僕の家の近くに、良い喫茶店があるんだ。そこで話そう」
「分かった。ボクは着替えたいから、一旦家に帰るよ。マー君は時間稼ぎしたいみたいだし」
完全に思考を読まれていた。
「じゃあ、僕も準備でき次第迎えに行くよ」
「ちゃんとエスコートしてくれよ?」
「こういうときだけ女子っぽくなるんだな」
雅弘は、笑みを浮かべて歩き出した。瑞穂も、後をついていった。
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