第5話 真夏は祖父の下ネタで

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 僕らを置いて、彼女はそそくさと家の中へ入ってしまった。あとをついて入ろうとすると、彼女のおじいちゃんが近寄ってきてそっと耳打ちをしてきた。 「許してあげてくれ。根は真面目で良い子なんだが、なかなか言葉がきつくてな。今日は特別パンチが入っとったが、もしや女の子の日かもしれん!なーんて!ハッハッハッ!」  おじいちゃんやめてくれ。思春期真っ只中すぎて笑うに笑えない。 「なんか言ったか?エロじじぃ。」  全然隠しきれていないひそひそ話を聞きつけて、彼女が鬼の形相で戻ってきた。 「何も言っとらんて!京子は可愛くて優しいのーって二人で話しとった。な、太一君?」  僕は黙って首を縦にブンブン揺らしたが、向けられた視線は変わることなく冷たくトゲトゲしい。  彼女はしばらく僕らを睨みつけると、フンッと鼻を鳴らし玄関の戸を強く締め家の中へ戻っていった。 「あぶないあぶない。バレるところだった。」  いやバレてますよ!  もうこれは完全に嫌われた。ただでさえ勘違いしたせいで気持ち悪がられてるのに、下ネタを話してるって思われた以上この先一切の進展は望めない。  こうしてあっけなく僕の青春は終わりを迎えることになるのだろうか。  呆けている僕の肩にそっと手を置き、彼女のおじいちゃんが一言呟いた。 「急いては事を仕損じる、だぞ。」     
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