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彼女は林に向かって指を差した。指差した先は木々が生い茂り、かろうじて人一人が通ることができるような獣道が奥へと続いていた。地面に生えている草達は足を踏み入れた途端に侵入者の足に襲いかかり絡みつきそうなほど土に繁茂している。
「こんな道通ったら本村さんスカートだし草で肌切っちゃいますよ!それにお腹空かしたクマとかイノシシが出てきたら…。」
「だってこっちの方が近道なんだもん。」
彼女はバックの中からジャージのズボンを取り出し、スカートの下に履きだした。僕は慌てて掌で両目を隠した。
「ちょっと!僕いますよ!」
「大丈夫よ、暗くて見えないから。」
確かに暗くて見えない。僕はほんの少し広げていた指の間をそっと閉じた…。
「ジャージの上着あるけど、ツルとかで腕切りそうだから着る?」
耳を疑った。いきなり女の子のジャージの上着を着る日が来ようとは…。だがそんないきなり受け取ることはできない。
「そんな受け取れません!」
「冗談に決まってるじゃない。男子に上着貸すわけないでしょ。」
僕は受け取ろうとほんの少し構えていた両手をそっと下ろした…。
彼女は携帯のライトを点け、平気な顔で獣道へと入って行く。僕はなんとも言えないモヤモヤした気持ちをどうにか押さえ込み、背中を見失わないように彼女を追って林へと入って行った。
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