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第2話 真夏は電車の停車場で
平凡な日常を送ってきた僕にとって、女の子から告白されることなど頭の片隅にあるはずもなく、御察しの通りそれに対する対処法など持ち合わせていなかった。
「ちょ、え、どういうこと…」
「なに、嫌なの?」
可愛いらしい見た目とは裏腹に、高圧的な彼女の言葉が余計僕の頭の中をかき回した。
「と、とりあえず苦しいのでこの手を離してくださいませんか…」
「あらごめんなさい。」
苦しさから解放され酸素が供給されたのか、ようやく脳が思考を取り戻す。
一体なぜ急に告白なんてされたんだ…。イケメンだってスポーツマンだってこの学校に何人もいる。
それなのにわざわざクラスの端にいるような男を選んだ理由は何なのか。まさか人生で三回しかないと言われているモテ期ってやつがきたのか?
「今日一緒に帰るから。完全下校のチャイム鳴ったら昇降口集合で。」
僕の返事を待たずに彼女は教室を立ち去った。あまりにも一瞬の出来事で僕はあっけにとられるばかりだった。
ただ一つわかったことは、 今日全校生徒憧れの彼女と帰り道を共にするということ。
読みかけの小説が風でめくれ、早く続きを読んで欲しそうにしている。しかしそんな場合ではない。
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