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部屋の灯りを点けると、すぐに目に入るのは、部屋の片隅にある少し小さめの仏壇。
俺はその前に正座をすると、すぐにロウソクに火を灯し、線香に火を点けた。
チーン、という鈴の冴えた音が部屋の中を響く。
俺は手を合わせながら小さく「ただいま」と呟いた。
目の前には八年前に死んだ妻のさおりと娘の静流の嬉しそうな笑顔の写真。
幼稚園の入園式で撮った二人の笑顔が、今は自分の胸を締め付ける。
さおりと静流が死んだのは、ランドセルを買いに三人で近くのショッピングモールに向かった日のことだった。
まだ夏の暑さが残る九月。
駐車場からショッピングモールへ向かう道。
横断歩道を渡ろうとしている二人に、大きなワゴンがスピードも落とさずに突っ込んできた。
いまだに俺の耳に残るさおりの叫ぶ声。
「しずるっ!」
目を閉じれば、二人が倒れている姿が今でも鮮明に目に浮かぶ。
軋む思いをそのままに、ロウソクを消すとその部屋を後にした。
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