2.乾杯

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「わたし、席を移動するわ」ぶつくさ言って、セシルは新郎新婦の席に近いテーブルへ移動した。ツバキと咲子が座っている。二人とも英語があまり……というか、全然できない。 「オー、ウェルカムウェルカム」ツバキがカタカナ英語を話す。  セシルはぎこちなく笑うが、なぜか共通の話題でもあるらしい、「練習した?」「プラクティス 、プラクティス 」とささやきあっている。なにかある。きっと、なにかやらかそうとしている。(こわい。こわすぎる)  けれど、言葉の壁なんて大したことはない。雰囲気と、相手を理解しようとする気持ちがあれば何とかなるのだろう。  ピアノの演奏者が色々を奏でてくれることを確認したレンは、ニューヨークチームのテーブルの人の多さにぎょっとした。が、すでに諦めの境地にきている。わざわざ人数のバランスを考えて、客人らに席を移動してもらうわけにもいかない。みんな笑顔なのだから。それに、五十嵐も三夜子も不満がないらしい。新郎新婦はにこやかに会話している。親族らも和気あいあいとしている。だから、これでいい。  再びヘッドセットをつけて、スタッフへ指示を出した。 「次は、ウェディングケーキよ、どうぞ」
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