3.ウェディングケーキ入刀

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「レンちゃあん」  ガゼボの入り口へ向かうと、コックコート姿のモエがいるのが見えて、レンは呼吸を忘れてしまいそうだった。「あっあっあっ、モエおねえさまっ」  (しゅう)と別れて1週間も経っていないのに、この状況。泣きそう。  モエさんは、まだ知らないはず。ほんわかした優しい彼女を悲しませるかもしれない。どうしよう、わたし。泣く。 「ピエス・モンテ(シュー菓子を塔のように連ねた、フランスの結婚式で用意されるもの)じゃなくて、本当に良かったのかしらあ?」  目の前の台には、丸型のケーキが三段に重なり、それぞれの側面にはレモンの黄色やライムのグリーン、オレンジなどの柑橘が薄切りになって、センス良く飾られている。斬新、とレンは思った。  シトラス系で飾るのが、三夜子の希望だったらしい。ケーキの一番下には、R&Mとアルファベットの型を取って焼いたクッキーが添えられている。喧嘩になるやつだ。  ん? Mは三夜子でしょ? R? ……ラッくん? マジか。 「うわあ、素敵です‼‼」斉藤と別れたことなど、どこかへ吹っ飛んだらしい。 「ありがとう。じゃあ、これを持って行くの、手伝ってくれる?」 「は、はい」  
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