第5縁

6/22
前へ
/406ページ
次へ
私が晋作さんに惹かれたのは何故だろうと考えてみるけれど、決定的な事は多分ない。 だけど私の事を心配してくれたり、優しくしてくれたりするところを見て、段々と好きになっていたんだと思う。 「わかりません。……でも、晋作さんはいつも真っ直ぐで、私の事を気にかけてくれた」 「そんなの俺だって……!!」 「何がっていうのはないけれど……晋作さんの事が好きだと思ったんです」 ギュッと握られた拳はふるふると震えている。なんて声を掛けて良いかわからなくて、私は黙ったままで。 沖田さんの視線は変わらず悲しそうで、胸がキュウッと痛くなった。 「……景ちゃん」 私の名前を呼びながら、端正な沖田さんの顔が近付いてくる。驚いて両手で押し返そうとしたけれど、沖田さんは片手で簡単に、私の手をどけた。 鼻と鼻が触れて、流石に胸がドキドキとしてしまう。 「お、沖田さんっ。離れてくださいっ……」 「俺はね、近藤さんの為に生きているんだ」 「そ、それが……?」 「だから近藤さんの言う事は絶対。景ちゃんを連れて来いって言われたら、それに従わなきゃいけないん」 以前新撰組に連れていかれた時、確かに沖田さんは助けてくれなかった。だけど別に恨んでなんかない。 むしろ仕方ないとさえ思っている。 新撰組のトップは近藤さんなんだから、沖田さんが従うのは当たり前だ。
/406ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加