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4月も終わりに近付いてきた。すっかり葉桜になってしまい、ピンク色の可愛い花の姿はもう見られない。
ポカポカと暖かい春の陽気は心地が良くて、ついうとうとしてしまいがちになる。
そんな春の昼下がり。
「いらっしゃ……いませ」
沖田さんはやってきた。
いつものように原田さんを連れて。だけど今日は原田さんの影に隠れてもう1人。
「邪魔するぞ」
「土方さん……」
珍しい組み合わせだ。
沖田さんと原田さんの組み合わせは、私がこの時代に来た頃からずっと当たり前だった。
だけどそこに誰か加わるのは今までなくて。しかもそれが土方さんなものだから、自然と一歩引いてしまう。
「普通に客として来ただけだ。そんなに警戒するなよ」
「す、すみません! お茶、用意します」
席に案内して3人分のお茶を注ぐ。
久しぶりに会う沖田さんに、どう接して良いかわからないから、持って行くのを躊躇ってしまう。
「景ちゃん。どうしたの……って新撰組か」
2階から降りて来たおまさの視線が3人の方へと向く。それにいち早く気付いたのはもちろん原田さんで。
2人の視線がばっちりと合ったのも束の間。
おまさはすぐに顔を逸らすと私の後ろへと隠れてしまった。
その様子を、原田さんが見て傷付かないはずがない。あからさまに俯いてしょんぼりとしている。
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